焼き網ひばち

ブルーアーカイブ二次創作文章など書きます。

夕焼けベンチ! ヨシミとフィーナ

夕焼けがビルの森を最高に素晴らしい色へと染め上げる。

 

今日はもう終わりだよ。楽しかった人も、これからの人も、会えるならまた明日ね。

もし茜に輝く太陽を読めるとすればそう書いてあるだろうメッセージをばら撒きながら世界が刻々没してくすみへ向かう時間帯。

 

無常なお空が勝手に色を手放し始めたキヴォトスの河川敷で、ベンチに座り込んでいた伊原木ヨシミは伸びをひとつ。ぐーっと腕を体を伸ばして気の抜けた声なんて出しながら、任務のために身も心もONになった頑張りスイッチをパチパチ切って色々ゆるめて夕焼けの中にほぐしていく。

「今日もお疲れ様デシタ。」

隣に座る戦友、朝比奈フィーナが微笑みながらこちらを見ていた。

「ヨシミが伸びる姿を見るたびに、私、一日の終わりを実感するんデス。任務の緊張感、戦闘の高揚感、そして綺麗な夕日に伸びるヨシミ!ふにゃー!今日も最高の勝利デス!」

 

フィーナちゃんがこちらへ向けるキラッキラな瞳の中に本気で好きなものをハイになって語る炎が見える。瞬きの際に火の粉をも散らしてくるフィーナちゃんのココ好き語りには一切の悪意がない。

 

だからヨシミちゃん恥ずかしい!からかいナシの近い距離で戦友の瞳をまっすぐ見つめて言うもんだからさらにである!!

人をドキドキさせる熱視線に撃ち抜かれる緊急事態に強張って固まっちゃったヨシミちゃんのいくつかのスイッチがバチンバチンとONに入って、頬には赤みが差してもう大変!せっかくスイッチOFFに切り替えたのに。また伸びなきゃいけないじゃない!

 

「きゅっ、急に変な事言わないでよ!」

「ふにゃー!アレ?なにか違いマスネ。こうデショウカ?ふーにゃ!?うにゃー!?」

固まってるヨシミちゃんを前にして、変なポーズで伸びをマネし始めたフィーナちゃんに抗議は通らなかった。

「聞きなさいよ!あと『ふにゃー!』って何!?私そんなこと言ってた!?」

「ふにゃー!?…あ!先生デス!!ヨシミ!先生が来ましたヨ!!帰りまショー!」

文化の研究(ヨシミ伸び)に夢中になったフィーナちゃんがヘンテコな伸びを連発する最中にシャーレの先生を見つけたので、夕焼けにくるまれたひと休みタイムもこれでおしまい。

弾かれたように立ち上がったフィーナちゃんはもう駆けだしていた。

 

「だから『ふにゃー!』って何よ!?フィーナ!待ちなさい!フィーナ!!」

 

河川敷に落とした影をぐんぐん伸ばし続けるベンチを置き去りに、駆ける戦友を慌てて追いかけるヨシミちゃん。

 

 

ビル街を賑やかに帰っていく3つの影も、いよいよ迫る夕暮れの先の宵闇へ溶けて紛れて、また明日。

 

 

ふにゃー!