第一部隊の後方担当、愛清フウカがカレーを作る。陣地の先にちょうど良い建物があったから、階段上って二階で作る。
構えた陣地の補給箱から材料を持ち出して、伊原木ヨシミが運んで届けるお手伝い。
「ヨシミー、タマネギ持ってきてー」
のどかな声でフウカちゃんから指示が飛ぶから、連ねたタマネギ首に巻き付けヨシミちゃんが届けに向かう。
誰かの背中が建物に入っていくのを見つけて、少し早足ヨシミちゃん。シャーレの先生かしら?もしやエネミー!?
違うぞあれは獅子堂イズミ!第一部隊のアタッカー、前線で暴れる任務はどうしたんだいイズミっち!?
動揺しながらタマネギ揺らして建物へ突入!急いで階段を上がりかけて、そこでヨシミちゃんの足はピタリと止まってしまう。
「イズミ!イズミだめ!!まだカレー作ってる途中だから!!むっ!むーっ!!」
二階からフウカちゃんの慌てふためく声がする。イズミっちが発するのは声でなく音!
ちゅー♡ちゅーっ♡
間を開けて
ちゅー♡
ハッスル!ハッスル!止まらない!!
呆然と階段で立ちすくむヨシミちゃんには二階のお部屋の状況がわからない。
フウカさんとイズミさんがとても仲良しなのは知っているけど、これは、どちらだろう。
カレーか
フウカさんか
それが問題だ。
二階は今、どうなっているのか。
途切れないちゅー♡に邪魔されて、思考することもままならない。
すごく長い時間、ちゅーっ♡を聞いていたと思う。階段で、タマネギを首に巻いたまま。
いつの間にか二階からの情報はフウカさんの荒い息づかいだけになっていた。
ついに階段でへたり込んで動けないヨシミちゃんのもとへ、イズミっちがゆっくりと階段を降りてくる。満ち足りて、つやっつやのイイ笑顔!
「ごちそうさまでしたー♡」
にこやかにヨシミちゃんへアイサツを決めると、イズミっちは愛銃『デイリーカトラリー』を担いで前線へと駆けだし、あっという間に見えなくなった。
タマネギって、こんなに重いんだ。
動かない体をタマネギのせいにして、未だお使いの果たせないヨシミちゃんはフウカちゃんの息づかいを階段からただ聞いていた。
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